骨盤臓器脱について
Pelvic Organ Prolapse
女性の骨盤内臓器が、その支持組織が弛緩することにより腟から腟壁ごと脱出する疾患のことをいいます。主に脱出する場所により、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤、尿道瘤、断端脱などと呼びますが、これらが複数脱出していることも多くあります。原因は、これら臓器を支えている骨盤底筋群の支持が弛緩しているためと言われています。
症状
脱出部位によって様々で、図のように下垂感や腟部の違和感を特に夕方に強く感じる方が多いです。膀胱瘤があるとおしっこの出の悪さや頻尿を認め、直腸瘤があるとお通じの出が悪いなどの症状を伴うこともあります。
診断方法
骨盤臓器脱のタイプと程度を調べるため、いくつかの質問や検査を行います。問診 | いくつかの質問票と排尿日誌を記録します |
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内診 | 内診台で、尿道や骨盤底筋群の状態を診察します |
尿検査 | 膀胱炎や血尿、細胞の異常がないかを調べます |
尿流量検査 | トイレでおしっこの勢い、残尿を測定します |
排尿日誌 | 排尿の時刻、量、尿漏れの有無、飲水量などを数日間記録します |
画像検査 | いきみをかけながら撮影して、尿道・膀胱の動きなどを調べます。 (MRI検査、超音波検査、膀胱造影検査) |
治療
1.骨盤底筋体操
弱くなっている骨盤底筋を鍛える体操です。
正しい方法で行うと、2~3カ月で効果が期待できます。
しかし、自己流では間違った方法で体操している場合もあり、十分な効果が得られないこともあります。
当院では「骨盤底リハビリ外来」を設けており、専門の女性の理学療法士による個人指導をさせていただきます。
詳しくは「骨盤底リハビリ外来のページ」をご参照ください。
2.ペッサリー(腟内装具)療法
一般的に「リング」とも言います。
腟内に挿入することで骨盤臓器の下垂を防ぎます。
定期的に交換する必要がありますが、ご自身で管理(自己着脱)できる場合は通院の必要な回数を減らすこともできます。
自己着脱にご興味があるかたは、ご指導させていただきます。
ペッサリーの形や大きさは患者さんの状態に合わせて選択させて頂きます。
3.手術療法
上記治療法でも改善が認められない場合や不具合がある場合は、手術療法が選択されます。
手術療法は、大きく分けて経腟手術と経腹手術にわけられます。
経腟手術は腟を切って手術を行います。
経腹手術はおなか側から手術をします。
基本的には腹腔鏡を用いた手術で、小さな傷で行えます。
また、損傷部位の修復に医療用のメッシュ(網)を用いる場合(メッシュ手術)と用いない場合(非メッシュ手術)に分けられます。
以下に代表的な手術を説明させて頂きます。
①TVM (Tension-free Vaginal Mesh)手術
経腟・メッシュ手術です。
腟の下垂している部位を切開し、そこにメッシュをハンモック状に留置し臓器を支えます。
基本的には子宮は残したままとし、メッシュを周囲の骨盤の靭帯に固定します。
②NTR(Native tissue repair)手術
非メッシュ手術で、経腟・経腹手術の両方の方法があります。
この術式は、メッシュを使用せず、損傷部位を補強し、骨盤内の靭帯を使用して臓器の支えを強化する方法です。
メッシュを使用しないですむというメリットがありますが、再発率がややメッシュ手術より高いという報告もあります。
患者さんの状態に合わせて修復方法を選択します。
③LSC(Laparoscopic Sacrocolpopexy;腹腔鏡下仙骨腟固定術)
経腹・メッシュ手術です。
腹腔鏡の手術です。
お腹に5~12mmの穴を数箇所開け、炭酸ガスを入れてお腹にスペースを作り、そこにカメラなどの手術器具を入れテレビモニターに映して手術を行います。
メッシュを腟の前面と後面にそれぞれ一枚ずつ縫合固定し、これらを頭側にある仙骨前面に吊り上げて縫合固定します。