尿失禁(尿漏れ)について
Incontinence

尿失禁とは、自分の意思とは関係なく、尿が漏(も)れてしまうことです。
尿失禁にはいくつかのタイプがあります。
代表的なものとして、「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」があり、それらが合併する場合「混合性尿失禁」といいます。症状や治療法はタイプによって異なります。
尿漏れのために、

  • やりたいことを我慢している(旅行に行けない、運動ができない、など)
  • 日常の生活に支障を感じる

上記のような場合には、早めのご相談をお勧めします。

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①腹圧性尿失禁

くしゃみや咳、重い物を持つ、階段を昇り降りするなど、お腹に力がはいると尿が漏れるタイプです。
中高年女性の4人に1人に見られ、とても頻度の多い尿もれです。
骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤など)に合併することもあります。
尿パッドをあてていれば気にならないという軽い程度から、立ったり歩くだけで漏れてしまう重症の場合もあります。
原因は、膀胱(尿をためる臓器)、尿道(膀胱から尿を外に出す通路)などの臓器を支えている骨盤底の周りの筋肉が、妊娠、出産、肥満、加齢によって弾力性を失ってゆるむために起こります。腹圧のかかる運動や重症の咳、便秘などがあると悪化します。

尿失禁02

②切迫性尿失禁

尿意切迫感(急に起こる強い尿意)を感じると同時または直後に尿が漏れるタイプです。
トイレに着くまで我慢ができず、「青信号(尿意がない状態)から、黄信号(軽い尿意)がなく急に赤信号(強い尿意)になって間に合わない」という感じです。
水に触れたり水の音を聞いただけで強い尿意が起こることもあります。
原因は、骨盤底筋が弱くなっている他、尿意を感じる脳や神経の伝達障害、膀胱の知覚過敏(過活動膀胱)、膀胱炎、膀胱結石など、様々です。炭酸、カフェイン、アルコールの過剰な摂取が関係する場合もあります。

診断方法

尿失禁のタイプと程度を調べるため、いくつかの質問や検査を行います

問診いくつかの質問票、排尿日誌など記録します
内診内診台で、尿道や骨盤底筋群の状態を診察します
尿検査膀胱炎や血尿、細胞の異常がないかを調べます
尿流量検査トイレでおしっこの勢い、残尿を測定します
排尿日誌排尿の時刻、量、尿漏れの有無、飲水量などを数日間記録します
パッドテスト1日の尿漏れの量を調べます
画像検査いきみをかけながら撮影して、尿道・膀胱の動きなどを調べます。
(MRI検査、超音波検査、膀胱造影検査)

治療

尿失禁のタイプによって、治療法が異なります。

①腹圧性尿失禁

1.生活指導
体重管理、適切な飲水量の指導、便秘の治療などを行います。

2.骨盤底筋体操
腹圧性尿失禁治療の第一選択として推奨されています。
弱くなっている骨盤底筋を鍛える体操です。正しい方法で行うと、2~3カ月で効果が期待できます。しかし、自己流では間違った方法で体操している場合もあり、十分な効果が得られないこともあります。当院では「骨盤底リハビリ外来」を設けており、専門の女性の理学療法士が個人指導をさせていただきます。
詳しくは「骨盤底リハビリ外来のページ」をご参照ください。

尿失禁04

3.ペッサリー(腟内装具)療法
腹圧性尿失禁を防ぐタイプのペッサリーを腟に挿入する場合があります。

4.薬物療法
尿道の括約筋をひきしめる薬を使用することがあります。

5.手術療法
生活指導・骨盤底筋体操が無効の場合や症状が強い場合に行います。
尿道を支えるテープを挿入する手術(中部尿道スリング手術:下記)を行います。

*中部尿道スリング手術(TVT手術、TOT手術、筋膜スリング手術)
尿道の後側から挿入した細いテープによって尿道を支えます。腹圧がかかったときのみ尿道のサポートとなります。
麻酔をかけた後、内診台の体位をとります。腟を約2cm切開して、尿道の後側から左右へ専用の器具を用いてテープを通します。腟からの手術で開腹の必要はありません。
当院でよく行っているTVT手術では、腟の2cmの創から下腹部(恥骨の上あたり)の腹壁までテープを通すため、下腹部(左右2ヶ所)と腟に小さな創ができます。初めは下腹部の痛みが多少ありますが、退院頃にはよくなります。
当院では入院期間は3泊4日です(手術前日に入院します)。退院後6週間は重いものを持つなどのお腹に力が入る動きを避けていただきますが、日常生活は可能です。
テープの張りがきついと術後に尿を出しにくくなることがあるため、通常テープの張りをゆるめに調節します。そのため、手術の効果が不十分に感じる場合もあります。その際には局所麻酔の手術でテープ張力を少し調整することがあります。

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切迫性尿失禁

1.生活指導
炭酸、カフェイン、アルコールの過剰な摂取は避けるよう指導します。

2.骨盤底筋体操
腹圧性尿失禁に対してだけでなく、切迫性尿失禁の治療としても推奨されています。
弱くなっている骨盤底筋を鍛える体操です。正しい方法で行うと、2~3カ月で効果が期待できます。しかし、自己流では間違った方法で体操している場合もあり、十分な効果が得られないことがあります。当院では「骨盤底リハビリ外来」を設けており、専門の女性の理学療法士が個人指導をさせていただきます。
詳しくは「骨盤底リハビリ外来のページ」をご参照ください。

3.薬物療法
膀胱の緊張をゆるめる薬を使用することがあります。
生活指導・骨盤底筋体操が無効の場合や症状が強い場合に行います。

4.手術療法
難治性過活動膀胱の場合、ボツリヌス療法、仙骨神経刺激療法を行うことがあります。詳しくは、「過活動膀胱のページ」をご参照ください。
※過活動膀胱:尿意切迫感と日中・夜間の頻尿を伴い、ときに切迫性尿失禁を伴う病態のこと